「高齢者のがん治療」知っておきたい16のポイント 静岡がんセンター山口建総長が解説

 治療方針の決定において、患者さんの意思はまず第一に尊重されなければなりません。後に詳しく述べますが、高齢者の場合、手術を終え帰宅後も家族などの負担が大きいと思います。そこで家族が治療方針を把握することが大切です。

 その上で医療者側が、患者さんや家族に治療に付随する危険性を丁寧に説明し、理解してもらうことが大切。高齢者は副作用や合併症が強く出やすい。手術創の回復も遅く、手術後、肺炎にかかりやすい。手術の危険度を増す病気を患っていることもよくあります。

 つまりは、治療によって逆に余命が短くなったり、残された期間をQOLが低下した状態で過ごさなければならない危険性が高いのです。そこで、高齢者のがん治療では、全人的医療の視点が大切です。

 それでも積極的な治療を希望するという患者さんの強い意思表示があり、「手術に耐えられる状態」「治療によって得る利益が大きい」といった要件を満たしていれば、医師は、さまざまな手法を工夫し、希望に沿えないかを検討します。

5 / 13 ページ

山口建

山口建

慶応義塾大学医学部卒。国立がんセンター(現・国立がん研究センター)に勤務。内分泌部、細胞増殖因子研究部の部長などを歴任。1999年、同センター研究所の副所長、宮内庁の御用掛を兼務。静岡県立静岡がんセンターの設立に携わり、2002年、初代総長に就任し、現在に至る。著書に「親ががんになったら読む本」(主婦の友社)など。

関連記事