血液型と病気

8割の人が唾液や精液、毛髪などから血液型が分かる理由

写真はイメージ

 ただし1点だけ違いがあります。組織血液型抗原は、各血液型の人の8割にしか発現しないのです。これを「分泌型」と呼んでいます。残り2割の人は、組織血液型抗原を持っていません(非分泌型)。正確には、より単純な糖鎖が結合しているのですが、ここでは「無し」としておきます。つまり組織血液型抗原で見れば、人間はA・B・AB・Oと、「無し」型の5つに分かれているわけです。

 分泌型の人の全身に、組織血液型抗原が分布しているという事実は、感染症を考えるうえで重要です。ウイルスや細菌は、皮膚に取りついたり、気管や消化管の内壁に取りついたりして、感染を成立させます。その際、人の細胞の表面とうまく接着できるかどうかが、最も重要な問題になります。たとえば新型コロナウイルスは、ウイルス表面のSタンパク質と、人の気管細胞の表面に突き出ているACE2タンパク質がうまく結合して、初めて感染できるのです。そうでなければ、痰などで体外に排泄されてしまいます。コロナに限らず、病原体が感染するためには、こうした何らかの手がかりが必要になります。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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